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■志摩子さん日記(仮)


◇志摩子01

 カツカツと黒板を打つチョークの軽快な音と、シャーペンを走らせる音と、教科書か、或いはノートをめくる乾いた紙の音。
 それらの音を聞きながら、藤堂志摩子はぼんやりと窓の外を見つめていた。
 今は授業中なのだから、教師の話す事に耳を傾け、そして、きちんとノートを取らねばならない。
 頭ではそう理解していても、どうにもその為のやる気が沸いてこないのだ。
 きちんとノートは取るし、教師の話も聞いている。
 しかし、それをちゃんと理解しているのかと問われたなら、首を横に振らざるを得ないのが、ここ最近の志摩子であった。
 簡単に言うと、授業に身が入らないのである。
 そして、その理由は志摩子自身よく判っている。
 志摩子は窓の外に向けていた視線を、教室内のとある席の方向に向ける。
 その席には、髪をボブカットにした中肉中背の女の子、クラスメイトの桂さんが座っていた。
 一年生の頃からのクラスメイトで、二学年に進級した今年も、同じ二年藤組の仲間として、机を並べる事になった。
 だから、桂さんがその席に座っているのは、至極あたりまえの事で、何ら問題はないのではあるが。
「……」
「……」
 一瞬だけ、ほんの一瞬だけ、彼女と目が合う。すると彼女は、元来大きめな瞳を更に見開いて、直後、まるで取り憑かれるたように、ノートを取り始める。一心不乱に。けれど時折、こちらをちらちらと覗き見ながら。
 ずっと彼女を見ていることは不可能ではないだろうが、授業中だから、誰かに見咎められる恐れがあるし、なによりそれでは、まるで自分が桂さんを苛めているようで悪い気がする。
(……もしかして、嫌われているのかしら)
 心当たりなど全く無いが、こうも自分に対する挙動不審な態度を見せ付けられてしまっては、嫌われているのか、それとも怖がられているのか──そんな風に、よくない考えを募らせてしまう。
 いっそ、気にしなければいい。
 けれど、そんな事は自分自身が許せない。
 授業は大切だが、大切なクラスメイトの方が何より大切なのだから。



◆桂01

 11月20日(金) 午前晴れ午後やや曇り

 今日は朝から寒かった。
 お日様は照っていたけど、それを上回るほどに空気が冷たかった。
 吐く息も白くて、そろそろ登校するときに、制服だけでは辛くなってきた。
 そろそろ新しいコートが欲しいかな。中等部の頃に買ったものをずっと愛用しているから。
 でも、これはタイミングが重要だ。
 もしかしたら、あの人も今年、コートを新調するかもしれない。
 お揃いにするのはさすがにあざとすぎるから、出来ればそのときは、色違いのものを狙いたいところだ。
 そうすれば、お話するきっかけになるじゃない? 「わ、凄い偶然だね。色違いだよ」、って。
 ……最近あの人は、どことなく元気が無い。
 なにか、悩んでるみたい。
 憂いを秘めたあの人も素敵だし、それはそれで、写真にとって定期に入れておきたいくらいに素敵だけど、やっぱり上品でおだやかでちょっと儚げで、小首をかしげた笑顔の方が私は好きだなあ。
 ああ、はやく元気になって欲しいなあ。




「……ほんと、はやく元気になって欲しいな」
 今日の分の日記を書き終えて、私は、日記の最後に綴ったフレーズを、ちいさな声で反芻した。
 今日も今日とて、私は一日中、あの人の姿を視線で追いかけつづけていた気がする。
 座学のときも、体育のときも、ホームルームのときも、私はずっと、志摩子さんの事を見つめていた。
 いうまでもなく、彼女の姿が見えないときは、頭の中で彼女の姿を補完して。
 だから最近、学校では志摩子さんを無意識に目で追いかけてる事が多い。
 しかし、彼女の悩みの理由など、皆目に知れない。
 聡明な人だから、きっと私なんかには想像も出来ないような高尚なことで悩んでるに違いないのだ。
「明日、それとなく聞いてみようかな」
 私なんかでは力になれないかも知れないけど、話を聞いてあげることくらいはきっと出来るから。



未完

解説
 一見、落ちているようにも見えます。ですがこれ、何故か志摩子パートと桂パートが別々のファイルで保存されていました。多分それぞれ別個で書いたのでしょうけど、両方とも書きかけのまま放置。今回、ニコイチにして体裁を整えてみましたが、本来はそうすべきSSではなかったのかも知れません。






▲マリア様がみてる