■一人歩きの桂さん


「らんらんらん」
 季節はすっかり春めいてきて、というかぶっちゃけ春まっただなか。リリアン女学園高等部での二回目の春は、なんでかな、例年よりもずっと、暖かくて満たされた気分になる。
 ううむ、何でだろ。
「なんてね」
 考えるまでもなく、理由なんて、明らか。あの人と同じクラスになれたからに決まってる。去年も、そして今年も同じ教室で過ごせて。しかも、三年に進級する時にクラス替えはないから、なんと、来年も同じクラスになれることが確定している。
 去年は一歩も踏み出せなかった。けれど今年こそはこの春こそは。せめて少しでもお近づきになれたら、いいなぁ……。
 私の大好きな、あの人に。

 カシャ!
「わっ」
 シャッターを切る小気味良い音と共に、炊かれるフラッシュが私の視界一杯にとびこんでくる。ああ、びっくりした。
「その顔いただき。恋に恋する15の乙女の生写真、鮮やかにゲット」
 そんなこと言って、「いただき」 って言う前に既にいただいてるんじゃないの。矛盾してるよそんなの。
「もー、蔦子さんったら」
「ごきげんよう桂さん。久し振りね」
「……ごきげんよう、蔦子さん」
 目の前でカメラ片手に不敵な笑みを浮かべるのは、去年のクラスメイトの武嶋蔦子さん。常にカメラを手放さないで、うら若き女子高生をフィルムに納めることを生きがいとする……なんて言うかな、割とヘンタイさんだ。
「私なんか撮って、どうするの? 蔦子さんの被写体は、もっぱら薔薇さまじゃない。私の写真なんて使い道ないよ、きっと」
「それはちょっと心外ね。光り輝く乙女たちの一瞬をカタチにすることが、私の生業なのよ。別に薔薇さま方だけに的を絞ってるわけじゃあないの」
「でも私、別に光り輝いてないもん」
 輝いているのは、薔薇さまを初めとして、あとはつぼみのみなさん。あの人たちは宝石みたいに輝いてるけど、私なんて、せいぜいそこらに転がってる石ころといい勝負、くらいなのに。
「ちっちっち。そんなことはないわ。桂さん、あなたには、もっと鏡を見ることをオススメする。今の桂さんは、結構キてるわよ」
「き、キてる?」
 何がキてるんだろ。どきどき。
「蔦子さんは何でもお見通しよ。桂さん、あなたは今、猛烈に恋をしている。初めての恋に、その身を焦がしている……。ファインダー越しに、その想いははっきりと見えるわ。そう、あなたの想い人はきっと──」
「わわっ、言っちゃ駄目っ!」
 蔦子さんの口封じを試みるも、ひらりとかわされあえなく失敗。けれど、それ以上の言葉が蔦子さんの口から紡がれることは、どうやらないみたい。ほっ。
 廊下でさわぐ私たちを、通りすがる人たちは、無遠慮に見つめてくれる。うう、春だから頭の中まで春になってるかわいそうな人だって、思われてるんじゃあ……。
「……言わないわよ。こういうのはね、言葉にしてしまうと叶わなくなったりするものなのよ」
 な、なんだろう蔦子さん。突然アンニュイ風ふかせたりして。
「だから私みたいな第三者はね、ただにっこり笑ってこう言うの」
 言葉通りに蔦子さんはにっこり笑う。同い年なのに、なんか、年上の人みたいな笑顔。こんな笑顔は、私には絶対きっと無理。ヘンなえへら笑いになるのが、せきのやま。
「──頑張ってね、桂さん」
「あ……う、うんっ」
 ドギマギしながらも、私は何とか返事を搾り出した。


  ♪   ♪


「あ」
「あっ……」
 校舎の一階でばったり顔を合わせたのは、私とちょっとだけ接点のある人だった。むむ、まずいなあ。私って実は、この人ちょっと苦手。
 よし、見なかったことにしよー。
「ごきげんよう、桂さん」
 ぐ、向こうは見逃してくれる気は、毛頭ないみたい。うう、やだなあ。だってこの人、いっつも怒ってるみたいなんだもの。何で祐巳さん、この人平気なんだろ。
「……ご、ごきげんよう由乃さん」
「ちょっと、どうして後ずさるのよ。何か、感じ悪いわね」
 感じ悪いのはあなたの方だよっ。どうしてこれぐらいのことで怒るの? ああっ、助けて祐巳さんっ。

 ……由乃さんと知り合ったのは、まだ一年生だった頃のこと。
 (そう、そうだよ。私は別に、知り合いたくなんてなかったのに……)
 私と祐巳さんがお話してる時に、遠慮なんて言葉知らないみたいに、いきなり会話に割り込んできたんだ。まるで、祐巳さんと話をしてる私のことを、邪魔だとでも言いたげな雰囲気で。
 そう、私はその時に知ったんだ。
 『由乃伝説』 なんて、真っ赤な嘘っぱちだった、っていうことを。
 清楚でしとやかで控えめで、強く凛々しい姉をかげながら支える 薄幸の少女。私もその瞬間までは、そう思い込んでた。そう、思い込まされてたんだ。
 明らかな敵意っていうか、けいべつのまなざし、みたいなのを感じた。私と祐巳さんの会話に割り込んできた由乃さんは、上から下まで舐めるように私のことを見つめたと思うと一言、「ごきげんよう」 と。その、嫌な感じの視線のままに。
 そのとき私は悟ったよ。この人とは、永遠にお友達にはなれない、って。
 恐い人は嫌い。優しくない人は、嫌い。
 だからリリアンのみんな、早く気付こうよ。由乃伝説なんて、たんなるみんなの空想に過ぎないんだ、ってことを。

「……突然黙り込んで、どうしたの? 気分でも悪いのかしら」
「あ、あ、えっと私、お姉さまと待ち合わせしてるからっ。それじゃあバイバイ、由乃さんっ」
「あ、ちょっと待ちなさいってば! まだ話は……」
 こういう時は、逃げの一手だよ。それにお姉様と待ち合わせしてるのは、嘘じゃないし。
 さよなら由乃さーん……って、げげっ。
「まだ話は終わってないって、言ってるでしょっ!」
 そ、そんな。こういう時は、走り去る私を、その場に立ち尽くしたまま拍子抜けしたような表情で見つめるって、相場は決まってるのにっ。
 追いかけてくるよ、あの人!
「だっ、だから急いでるんだってば!」
「あなたの用事は、私より重要だって言うのっ」
 あ、あたりまえじゃん。ああもう、今日はヘンなひとによくからまれる日だなあ、もうっ。


    ♪


「はー、はー」
 ……どうして、生徒玄関に来るだけで、こんなにも私は疲れてるのでしょうか。
 息を切らしている私を、不思議そうに眺めていく人がちらほら。下校ラッシュの真っ只中だから、生徒玄関は人でごったがえしてる。
 そんな中、額に汗滲ませてぜーはーいってるヘンなのが、一人。
「やだやだ」
 早く行こう。お姉さまきっと、もう待ってるよ。由乃さんのことはどうにか巻いたつもりだけど、あの人、油断のならない人だから。
 下駄箱の中から外履き出して、と、そこで誰かに声を掛けられた。
「あ、桂さん」
 顔を上げると、そこには。
「わわっ、祐巳さんだっ」
 うう、懐かしいよぅ。一ヶ月くらいろくに顔を合わせることもなかったから、ほんと、懐かしい気分に浸れる。今年も一緒のクラスになりたかったなあ。
「ああもう久し振り〜。元気してた?」
「う、うん私は変わりないよ。で、でも、どうしてそんな、過剰に私の髪の毛に、触れてくるのかな……?」
「だって、懐かしいんだもーん」
 一年生の頃は、毎日顔を合わせていた仲だったから。左右に飛び出した二つの髪房は、相変わらずの触りごこちだ。
 ついこないだまでは、いっつも楽しいおしゃべりに興じていた、私の大切なお友達。クラスが替わって、あまり顔を合わせられなくなっただけでかなり寂しい。私にとっては、祐巳さんが傍に居ない学園生活なんて、牛の乗ってない牛丼みたいなものなのに。
「あっ、そう言えば知ってた? 今度赴任してきた、あの女の先生。英語の。すっごい美人さん。あの人、リリアンのOGでね、何と、昔、薔薇さまだったんだって!」
「えっ、ウソ!?」
「ほんとほんと。しかも驚くなかれ、紅薔薇さま」
「うわー、じゃあもしかしたら、このロザリオは、昔あの先生が首に掛けてたのかも……」
「そうそう。もう、このこと祐巳さんに話したくって話したくって。本人に確認とったわけじゃないから確かなことは言えないんだけどね。あ、そういえば祐巳さん、中等部の頃、青田先生に受け持たれてたこと、あるって言ってたよね」
「う、うん。三年の頃、青田先生のクラスだったよ」
「そうそう。あの話が回りくどい青田先生。あの先生が、今度結婚。しかも今回で三度目」
「三度目!?」
「そう、つまり離婚暦かれこれ二回。なんかねー、いっつも話が長くて回りくどいから。奥さんにもあんな調子らしくて、それが原因で過去二回上手くいかなかったんじゃないかって、もっぱらの噂」
「むー、何となく解るような気がする。奥さん、疲れそう」
「だよね。私だったらパス。あの先生の奥さんになるの」
「わ、私もパス……かな。でも、今度は上手くいくと良いね」
 こんな噂話してる時だって、祐巳さんの言うことは優しい。
 それにしても……すーっとしたよぅ。二つとも、今日仕入れたばかりの新鮮な情報だから。それを一番に話す相手が祐巳さんとなればもう、水を得て踊る魚って感じだよ、私は。
「あ、そういえば桂さん、今日、由乃さんに会った?」
「よっよっ」
「?」
「よ、由乃さんが? どっ、どうかしたのかなっ」
 内心のどうようを押し込んで、私はどうにか声を絞り出す。
「……? あんまり私には教えてくれなかったけど。ロザリオがどうとか」
 ロザリオ。
 島津由乃。
 そして私。
 私と由乃さんが、ロザリオという単語でANDをとる場合、浮かび上がってくる共通事項がひとつある。
「……」
「何か、桂さんと話したいこと、いや、言いたいことがあるとか」

 ──黄薔薇革命。
 (必殺、ロザリオ返し!)
 なんてふざけてる場合じゃなくて。
 由乃さんが、姉である支倉令さまにロザリオをつき返した事件。高等部全体を震撼させたあの大事件には、関連用語として、『後追い破局』 という単語が存在する。
 主体性がない。
 周りの人間に流されてロザリオを返すだなんて、何考えてるの?
 そんな由乃さんの言葉が、私の頭の中でひびく。いや、実際に言われたわけじゃあ、ないけどね。
 けいべつのまなざしは、つまりそういうこと?
「……なんとなくだけど、別にキツイこと言おうとしてたわけじゃ、ないみたいだったよ。あくまでも私の勘、だけど」
「……うん」
 なんだか神妙になってしまった私をおもんばかったのか、祐巳さんは、表情をほころばせた。こんな表情を見るのも、久しぶり。
「あ、ごめんね。久し振りにお話できたのに、変な話しちゃって」
「ううん、いいのいいの。全然、気にしてないから。それよりもさ、知ってた? ここだけの話だけど……」
 気にしたくないけど、どうしたって、気になるよ。


   ♪   ♪


 知らないんだよ、あの人は、私みたいな目立たない生徒の気持ちなんて。
 このロザリオを返したら、どうなるんだろう。そう考えない妹が、果たしているだろうか。祐巳さんみたいな人は、ともかくとして。
 ロザリオを返したことがきっかけで、あるいは、お話の中の主人公の女の子みたいに、なれるかもしれない。そんなことを私はあの時、考えた。
 自分はお姉さまには相応しくない、そんな風に思い悩んで、ロザリオを返してしまったクラスの子は確かに数人いたけれど。
 私にもそんな気持ちが少しはあった。
 けれどあの時頭の中を支配していたのは、ドキドキするような非日常へのあこがれ。
 祐巳さんや……そう、由乃さん、あなたみたいに、なりたかったんだよ。
 でも、無理だった。
 それだけの話。
「はぁ……」
 何だかブルーだ。お姉さまに今日は、いっぱい甘えちゃおう。
 そんな風に俯きながら考えてたから、気付くのが遅れた。マリア像の前くらいに差し掛かった、校門まで伸びてる道のその先に、あの人がいたことに。
「桂……さん、 どうしたの? お腹でも痛い?」
「しっ、志摩子さん!?」
「きゃッ」
 ばか私。いきなり大声出したから志摩子さん、固まっちゃってる。ろくに前も見ずに歩いてたから、目と鼻の先にいた志摩子さんに気付かなかった。
「ごっ、ごめんなさい志摩子さん。驚かせちゃって」
「いいえ、私は大丈夫よ。それより桂さん、体調がすぐれないのではなくて? 保健室、行きましょうか?」
「あ、あ、全然大丈夫。心配掛けちゃって、ごめんなさい……」

 ごめんなさい志摩子さん。
 私、あなたのこと、大好きです──。

 本当は、私なんかが好きになっちゃいけないひと。志摩子さんは二年生なのに薔薇さまで、ものごしも穏やかでなによりとっても優しくて。一年生もさることながら、二年生、三年生からの人気も高い。
 だから、私みたいなふつーの生徒が、好きになったりしたら駄目な人。
 その柔和な微笑を見てるだけで、心がみたされる。いつだって優しくて、あたたかくて、私みたいに大して親しくもないクラスメイトにも、丁寧に気を使ってくれる。
 あぁ……
 キレイな人だなぁ。
 可愛くて優しくて、けれど言うべきことはきちっと言える芯の強さも、持ってる。そんな志摩子さんに憧れてる人間は多い。そう、きっと私みたいに志摩子さんのことが好きで好きでたまらなくて、いつだって視線はあの人を追いかけてる。そんな人はきっと、ここには沢山いる。
 私はそんな人間たちの一人。
 その気持ちに気付いたのは去年だけど、結局ロクに世間話すらできないままに、高等部での一年目は幕を閉じてしまった。
 そうして今年こそはと決意を新たにしたのは、ついさっきのこと。けれど……。
「はぁ……」
「?」
 思わず、溜め息ももれようというものだ。志摩子さんの隣に立ったらきっと、なんの特徴もない私なんか、霞んじゃうよ。私なんかじゃきっと、志摩子さんとは絶対に釣り合わない。目下それが今いちばんの悩み。
 お母さんのことは好きだけど、こんなときばかりはつい、恨み言のひとつも言いたくなる。もっと、志摩子さんと釣り合うくらいの美人さんに、産んで欲しかった。
 そんな無茶なことを考えてると──
「し、志摩子……さん?」
「少しだけ、じっとしてて。ね?」
 ね? と小首をかしげながら言うのは犯罪だと思います。可愛すぎる。ああもう、このまま時をとめられたなら。このまま志摩子さん持ち帰って部屋に置いときたい。誰の目にも触れさせないで私だけの……う、いかんいかん。これじゃ私もヘンタイさんの仲間入りだ。蔦子さんのこと言えないぞ。
 って、こんなこと考えてる場合じゃない。
(ああ、志摩子さんがどんどん近くに……かわいいよう。って、ええっ?)
 私の目の前まで来た志摩子さんは、その白い手を、すっと音もなく私のほうへと差し出してくる。それは頬のすぐ脇をすり抜けて、髪の毛にかすかに触れ──
 突然のことに私は、目を強くつむることしか出来なかった。
「とれたわ」
「へっ?」
 なんのことやら図りかねて顔を上げると、そこには相変わらず素敵な微笑を浮かべた志摩子さんのお姿が。そして、つい今さっき私のすぐ脇を通り過ぎていった手。その指先がつまんでいたものは。
「桜の花びらが、ついてたわ」
 手、だして、という志摩子さんの言葉に、なかば夢遊病者のようにそれにならう。そこに、志摩子さんの手が触れた。
(……!)
 なんてことはない。私の手の上には、桜の花びらが置かれている。それはとても志摩子さんらしいコトで。
 けど、志摩子さんから私への、はじめての──。

 ごきげんようという言葉を残して、志摩子さんは行ってしまった。その後ろ姿をぼんやりと見つめる私の頭の中で、志摩子さんの言葉のひとつひとつが反芻される。
 私はしらぬまに、両手を胸の中にかかえるようにしていた。胸の中に、桜の花びらが、一枚。
「志摩子さん……」
 せつない。
 こんな風にされては、とうてい諦めることなんてできそうもない。
 なんだか胸の辺りが熱い。まるで、さっきの桜の花びらが、熱を発しているみたいに。おかしいね。そんなこと、あるわけないのにね。


   ♪


「桂」
 ぼんやりとしたまま歩いていたから、不覚にも気付かなかった。校門を出てすぐのところに、お姉さまがいらっしゃったのが。
「わっ、お、お姉さまっ!」
「そんなに驚くことかしら? なにか、うしろめたいコトでもあるの?」
 悪戯っぽい顔で言うお姉さまに、私はぶんぶんと首を横に振ってみせる。それは、つい今しがたの余韻を払う行為でもある。
 お姉さまのそばにいるのに、心はあの人を求めてる、なんて。ひどく失礼な行為に思えたから。

 バス停でお姉さまと二人、並んで待っていると、ぽつりとこんなことを言われた。
「今日は、あまり話してくれないのね」
「へ? な、何がですか?」
 なんのことを言われているのか解らずに聞き返すと、お姉さまはにっこりと笑って、
「いつもは、いろいろなことを聞かせてくれるから。面白い噂話や、誰かと話したこと、とか」
「……え、ええ」
 それはきっと、あの人の所為。
 あの人が、私の心を揺さぶってしまったから。

 ……お姉さまは、なんて言うか、大人だ。
 たった一つ違うだけなのに、何歳も年上の、女性と話しているように思うことがある。お姉さまの前ではたいていはしゃいでしまう私とは対照的で、いつだって穏やかで、そして私のことを受けとめてくれる。
 ロザリオを返した時だって、私のことを怒ったりとか、しなかった。驚きはしたみたいだけど、いつものように落ち着かれたままで。私のことを全部理解してるみたいに──しばらくしたら、またいらっしゃい──と。
 きっとお姉さまは、あの時全部解ってたんだ。私の心の奥底まで。

「まさか、また、ロザリオを返したくなったとか?」
「ちっ、違いますっ! ただちょっと、考え事を……」
 お姉さまに隠し事は通用しないから、こうしてごまかしたって、全部見通されているのかもしれない。そう、こうしてる今も、私の心の中を占めてるのが、あの人だということでさえ。


 ──なにを悩んでるのやら……まあ、大体は想像つくのだけれど。
  あなたは自分のことを、平凡でとりえのない人間、だなんて思っているのかもしれないけど。
  私はそうは思わない。
  明るくて、誰とでも打ち解けて、けれどすぐに落ち込んだりもする。そう、今みたいに。感受性が豊かで、一緒にいて楽しい気分にさせてくれるあなたは、私にとって自慢の、妹。私があなたに憧れてる、って言ったら、あなたは驚くかしら。
  あなたの想い人が私でないのは、少しだけ残念だけれど……。
  だから、がんばって桂。
  あなたは私にとって、たったひとつの誇りなのだから──。


 了






▲マリア様がみてる